日本のAI(人工知能)は遅れている?世界と比べる日本のAI事情

普段の生活の中で、AIが導入された製品やサービスに触れる場面が多々ありますよね。

スマートスピーカー、家電製品などといった人間の代わりに動いてくれる機械は、私たちの日常生活において身近なものとなりました。しかし、世界的に見た場合、日本のAI事情は進んでいると言えるのでしょうか。

そこで本記事では、AIについて解説した上で、世界のAI導入状況を説明していきます。日本におけるAI事情は世界的に見るとどのような段階にあるのか、確認していきましょう。

AIとは

AIとは「Artificial Intelligence」の略語です。日本では「人工知能」と聞くことが多いでしょう。

AIの明確な定義は現時点では定まっておらず、学者によって異なります。例えば、中島秀之氏(札幌市立大学)と武田英明氏(国立情報学研究所)は「AIは人の手によって知能が備えられた実態。またはそれを発明することで知能に関する研究を行う分野」として考えています。また、栗原聡氏(慶應義塾大学)は「AIは人によって作られるが、その知能のレベルは人類を大きく超える可能性がある」と定義しています。

AIは人工的につくられた知的な情報プログラムの1つです。情報処理を行うソフトウェアによって、人間のような振る舞い、及び行動ができます。

ペッパーくんのようなコミュニケーションロボットや、お掃除ロボット、スマートフォンの音声応答アプリはAIが搭載された製品の身近な例と言えるでしょう。その他にも、医療、物流、建築など幅広い業界で、AIは人間の業務を代替する役割を担っています。

世界のAI導入事情

AIは日本だけでなく、世界各国でも注目されています。日本で暮らしていてもAIは身近に感じられますが、海外のAI事情は日本に比べて進んでいます。

2019年10月、アメリカの大手ソフトウェア企業Oracleと調査会社のFuture Workplaceは「職場におけるAI」の調査結果を発表しました。この調査の結果明らかになった、世界でAIの導入が進んでいる国TOP10は以下の通りです。

1位 インド:78%
2位 中国:77%
3位 アラブ首長国連邦:62%
4位 ブラジル:60%
5位 オーストラリア/ニュージーランド:57%
6位 シンガポール:56%
7位 アメリカ:53%
8位 イギリス:38%
9位 フランス:32%
10位 日本:29%

1位のインドでは、78%もの企業がAIの導入を行っています。2位の中国では77%、3位のアラブ首長国連邦の企業では、AIの導入割合が62%となっています。

AIが普及している国の多くが、AIに好意的とされています。AIを搭載するロボットとともに仕事を行うことを前向きに受け止め、かつロボットを信頼している人の割合も多い結果になっています。

参考:日本オラクル公式サイト
https://www.oracle.com/jp/corporate/pressrelease/jp20191016.html

日本のAIが遅れている理由

上記の調査結果からも明らかなように、世界的に見ても日本におけるAI事情は遅れていると言えます。しかし日常生活の中で「AI」という言葉を頻繁に耳にし、先進国としてITの高い技術を誇る日本において、AIの普及が世界的に見ても遅れていることに違和感を抱かれる方も少なくないでしょう。

ここでは、日本のAIがなぜ遅れているかについて解説していきます。

IT人材の不足

日本では、AIの開発において不可欠な存在であるデータサイエンティストの不足が深刻な問題となっています。

日本でAIを発展させていくためには、AIに関する知識・スキルを持った人材の確保を急速に行う必要があるでしょう。

システムの準備不足

AIはディープラーニングと呼ばれる機械学習技術によって画像や音声を認識しますが、この時に大量のデータが必要になります。しかし、日本の企業は膨大なデータの収集を可能にするビジネスモデルや、AIに学習させるためのデータを持っていないのです。

例えば、アメリカにおいてGoogle、Apple、Amazon、Facebookと呼ばれる4大IT企業は、サービスを利用するユーザーがスマホやパソコンから入力したテキストデータ、音声、映像をAI開発に役立てています。

対して、日本にはこうしたデータを収集できるシステム、及びビジネスモデルがありません。このビジネスモデルの少なさがディープラーニングを行うことを困難にし、遅れの原因となっているのです。

日本におけるデータやビジネスモデルの少なさは、研究費の不足と関係します。日本では、AIを研究・開発するために用意された研究予算が欧米と比較して2桁ほど少ないと言われています。AIとは人工的に作られた知能であり、知能そのものを研究する分野です。そのため、膨大な研究費が必要になるのですが、政府から提供される予算は非常に少ないのです。

研究費が少ないために、研究に遅れが出たり、短期的成果を求めるあまり高度な成果を出せなかったりといった事態をまねいてしまいます。

社会の認識

日本におけるAIの遅れは政府や研究機関のみならず、国民性も関係しています。日本人は「熱しやすく、冷めやすい」特質を持っているため、研究の成果が出るまで待つことなく、世間の興味がなくなってしまうと言われています。

世間から注目されない分野に充てられる予算はおのずと削減されるため、次のブームに対応することができません。研究成果を開花させるには、ブームの先を歩む必要があります。

また、多くの国民がAIに対して否定的なイメージを持つことも事実です。「AIに仕事を奪われてしまう」「AIに滅ぼされてしまう」といった恐怖感を抱く人も少なくありません。

AIへのマイナスなイメージを多くの人が持つことが、AI開発や発展の遅れに繋がっています。

日本の今後のAI戦略

世界的に見ても、AIの開発・導入が遅れている日本。少子高齢化、介護、業務効率化などが課題となる今日において、AIを発展させていくことはとても重要です。

そこで、日本政府は2019年3月にAI戦略を発表しました。AI戦略は4つの目標から成り立っています。

①AI時代に対応した人材の育成
②医療、介護、一次産業などでのAI強化による産業競争力の強化
③持続可能な社会を実現する一連の技術体系の確立、及びその運用を行う仕組みつくり
④国際的なAI研究、教育、社会基盤の構築

日本政府は、AIを活用して価値を社会に与えていきたいと考えています。そのためには、IT人材の確保が必要であるため、小学校ではプログラミング教育、高校では理数・データサイエンス教育などが導入されています。デジタル化社会に特化した人材を確保するため、公教育の場でもAIに関する教科などの導入が進んでいます。

参考:2019年 内閣府「AI戦略 2019概要」
https://www.maff.go.jp/

まとめ

多くの日本人にとって身近なAI。しかし、日本のAI事情は世界10位という結果に表れているよう、進んだものでは決してありません。日本のAI開発や導入が遅れる要因として、ビジネスモデルの不足、研究予算の少なさ、国民が抱くAIに対するマイナスイメージなどが挙げられます。

AIを上手く利用することで、業務効率化、少子高齢化といった問題を解決するにあたって役立つツールになります。政府は日本のAI開発を活性化するため、高い目標を掲げ、目標達成に向けて公教育の場でも将来の人材育成に力を入れているのです。

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