副業・複業は一般的な働き方になる?国と企業の副業・複業の考え方について
- 2021/8/3
- コラム
2018年、副業・複業は政府が進める働き方改革の計画の1つとして解禁されました。2021年現在においても副業・複業を禁止している企業があるものの、少なくない数の会社員が本業とは別の収入源を持っています。
本記事では副業・複業について解説した上で、国が国民に複数の仕事を持つことを推奨する理由について説明していきます。
副業・複業とは
「副業」「複業」とは「複数の仕事を持っている」という意味では共通する言葉です。しかし、この2つの言葉はそれぞれ別のニュアンスを持っています。
副業は本業の他にサブで仕事を持つこと。本業が優先で、サブの仕事はスキマ時間などを活用して行われます。一方、複業は抱えている仕事のいずれにおいても同程度に責任を持って従事することを言います。
以下、副業・複業を行うにあたっておさえておきたい3つのポイントを紹介していきます。
スキル・専門知識が必要なことが多い
副業・複業はスキル・知識をウリにして稼ぐ仕事が一般的。
近年、ライター、プログラマーなどWEB系の仕事を副業ないし、複業で稼がれている方が多いです。これらの仕事で稼ぐには、一定以上のスキルが必要になります。
また初心者OKの求人よりも、経験者や高度な技術を保有している方を求める求人の方が報酬は高めに設定されています。
仕事は自分で見つける
副業・複業をしている方の多くが自分で仕事を探し、獲得しています。人脈や依頼を受けて仕事をされる方もいらっしゃいますが、それは全体の一握りでしょう。
ほとんどの方たちが、クラウドソーシングやエージェント等のサービスを利用したりして仕事を見つけています。
確定申告を行う義務がある
副業・複業でお金を稼いだら、毎年2月16日から3月15日の期間内に、1年間の所得を税務署に報告する義務があります。
確定申告を怠ると、罰金などのペナルティが課せられることを覚えておきましょう。確定申告を行うことによって、過払い分の税金が戻ってくるというメリットもありますよ。
ただし、所得金額や他の条件によっては、確定申告をする必要のない場合もあります。副業・複業を始める前に、自分がどのような対象なのかを確認しておくと良いでしょう。
国の働き方に関する方針
2018年から政府によって副業の解禁が本格的に始まり、現在においても国は副業・複業を国民に推奨しています。ここからは、国が定めた働き方に関するガイドランを見ていきましょう。
副業・兼業ガイドライン
「副業・兼業の促進に関するガイドライン」は厚生労働省により2018年に制定され、その2年後に改定されました。
このガイドラインは、副業・兼業について関心を持つ方が年々増えていることを考慮し、副業・兼業に関するルールを明確化したものです。
ガイドラインのポイントは、以下の2点です。
・労働時間の管理
労働者は、労働基準法によって労働時間が決められています。複業をする場合は、本業と副業の労働時間を合算したものが原則です。
改定版のガイドラインでは、本業の企業と副業の企業でそれぞれ前もって労働時間の範囲を決めておく「管理モデル」が導入されました。
つまりそれぞれの勤務先で、決められた労働時間の範囲内に収まるよう、労働時間を調整する必要があるということです。
しかしこの合算が適用されるのは会社員やバイトなど、企業と雇用関係を結んでいる場合のみ。フリーランスや顧問などの場合、ガイドライン記載の「労働時間の上限」は適用されません。
・健康管理
改定版のガイドラインには労働者の健康管理についても記されています。
企業は副業・兼業等の有無に関わらず労働者の健康管理を行う必要があります。加えて50名以上の従業員がいる場合、従業員全員にストレスチェックを行うことも義務付けられています。
参考:2018年 厚生労働省「副業・兼業の促進に関するガイドライン」
https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11200000-Roudoukijunkyoku/0000192844.pdf
モデル就業規則の改定
2018年は「副業解禁元年」と言われている年。その大きな理由として「モデル就業規則」の改定の発表が挙げられます。新しい規則では、労働者は勤務時間外において本業に支障がない限り、他の会社の仕事・業務を遂行できると記されているのです。
「モデル就業規則」は企業が就業規則を作る際に基盤となるもの。この規則において「労働者が複数の仕事に従事できる」と明記することは、副業・複業が推奨されていると受け取れますね。
参考:2018年 厚生労働省「モデル就業規則」
https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11200000-Roudoukijunkyoku/0000118951.pdf
国が副業・複業を推奨する理由
副業・複業に関するさまざまな規定が国から発表されました。次からは、国が副業・複業を推奨している理由について確認していきます。
スキルアップ
本業とは別の仕事に従事することで、新しい分野の知識やスキルを得ることができます。
副業・複業で得た知識やスキルを本業に還元できるので、キャリア形成に貢献するでしょう。また別の業界に転職をする際、副業・複業の経験が役に立ったりします。働く人のスキルアップを図ることで、新たな事業が誕生することも期待できます。
年金の支給率低下
少子高齢化が進む日本において「年金制度が破綻するのではないか」「年金が支給される年齢が引き上がるのでは」といった不安の声が多く上がっています。
また、年金を受給できる年齢になっても、支給額が今よりも下がることも懸念されています。老後、年金に頼ることが難しくなると予想されているため、働けるうちに稼ぎ、貯蓄していこうという動きが日本で顕著になってきているのです。
終身雇用の現実性
バブル時代は、「大企業に就職すれば安定」「新卒で入社した会社で定年まで働くものだ」といった考え方が主流でした。しかし、現在の日本で終身雇用制度が破綻し、若者の多くが終身雇用で働けるという安心感を持っていません。
勤め先で働けなくなっても、副業をしていれば収入がゼロになることを防げます。また、副業での経験やスキルを活かし、転職活動がスムーズにいく可能性もあるでしょう。
企業が副業・複業を禁止する理由
法律上では、公務員を除く労働者の副業・複業を禁止しているわけではありません。そのため、副業禁止の企業に勤めている会社員の中には、これについて不満を抱える方もいます。
国が労働者の副業・複業を推奨する今日においても、社員の副業・複業を認めない企業があるのはなぜなのか見ていきましょう。
仕事が疎かになる懸念
社員の副業・複業を認めない企業は、全体の半分程度だと言われています。その理由は、社員が本業以外の仕事を持つことで自社の仕事に支障が出ることが危惧されているからです。
また、副業が軌道に乗ることで会社を辞められてしまうリスクもあるでしょう。優秀な人材が流出するのは企業にとって痛手となります。
情報漏洩のリスク
社員が別の会社でも働いた場合、社内情報が意図的でなくとも漏れる危険性があります。社内情報というのは、顧客情報、社員の個人情報だけではありません。社内情報には技術、分析方法、経営戦略なども含まれています。
社員が自社以外で仕事を行うことによって、ノウハウ、最新のアイディアなどが漏洩することが危惧されているのです。
長時間の労働
企業は社員が副業を行うと、超過労働を容認していることになります。例えば、平日は本業の仕事をし、休日は副業をした場合、その社員の休日はなくなります。
企業には社員が過労などによって健康被害が出ないよう管理する義務があります。そのため、社員に過重な労働となる副業を認めない企業も少なくないのです。
まとめ
「年金支給年齢引き上げ」「終身雇用制の破綻」などが懸念される今日において、多くの人たちが将来に不安を抱えています。国が国民の生活をサポートすることが難しくなりつつある中、副業・複業でプラスに収入を得ることが推奨されるようになりました。
副業・複業にはデメリットもあり、社員の過重労働、情報漏洩などを危惧する意見もあります。そのため、副業・複業をしたい、もしくはする必要のある方でも、それが実現できていないことも少なくないのです。
しかし、多くの企業は副業・複業の解禁を進めています。新たな働き方として多くの仕事に従事することは、今後の主流な働き方になるかもしれません。