フリーランスとして稼げるようになったら、法人化するという選択肢も出てくるでしょう。フリーランス初心者の中には「自分も法人化してみたい」という思いを持つ人や「法人化したら何かメリットがあるの?」といった疑問を持つ人も多いかもしれません。
そこで今回は、フリーランスの法人化を検討している人のために、法人化のメリット・デメリット、法人化を考える良いタイミングなどについて解説していきます。興味のある人は、ぜひこの記事をチェックしてみてくださいね。
法人化とは
フリーランス(個人事業主)として働いていた人が、株式会社や合同会社といった法人に代わることを法人化と言います。
会社設立と法人化の最も大きな違いとして、法人化する場合は個人で運営を行っていた事業、資産、及び負債を設立する会社に移動させるところにあります。会社設立はゼロからのスタートであるのに対し、法人化はすでに蓄えてきたものを新しく設立する会社に移すのが特徴です。
法人化のメリット・デメリット
フリーランスが法人化を行うことには、メリット・デメリットの両方があると言えます。法人化を視野に入れている方は、どちらも頭に入れておいた方が良いでしょう。
ここでは、法人化のメリット・デメリットについて説明していきます。
メリット:役員報酬を損金として認めてもらえる
フリーランスには給料という考え方がないので、売上から経費を引いた利益に所得税+住民税の15%~45%程度の税金がかかります。
対して、法人は給与として支払ったお金は役員報酬として認められます。売上から各種経費を引いた金額に20%前後の法人税がかかりますが、利益の金額によっては、法人化した方が税負担が減るでしょう。
メリット:保険料を経費にできる
会社が契約者である本人にかけた保険、ないし会社にかけた保険も契約内容しだいでは経費として認められます。たとえば、会社を守るために加入した保険料60万円を、場合によっては全額を損金にすることが可能です。
個人の場合は年金保険料や生命保険料などの控除をあわせて、最大12万円まで保険料を控除にすることができます。フリーランスが法人化した場合、個人でかけたお金に関しては保険料控除をあわせて使うことも可能です。
参考:国税庁ホームページ(https://www.nta.go.jp/index.htm)
メリット:決算期を決められる
フリーランスの決算期は12月と定められています。確定申告・納税については、2月15日から3月15日までに行わなければなりません。
一方、法人は決算期を自由に設定でき、後から変えることも認められています。繁忙期を避け、手続きの時間を確保できたり、売り上げによって節税対策を行うことも可能になります。
メリット:社会的信用を得られる
フリーランスは収入が不安定であるため、社会的信用が会社員と比べて少ないと言われています。
会社員と同額の年収を稼いでいても、クレジットカードの審査にひっかかったり、住宅ローンの申請に落ちたりすることも少なくないようです。また、フリーランスと契約しない企業も少なからず存在します。大企業をメインターゲットに営業する場合は法人化は必須でしょう。
デメリット:税金、社会保険の負担がかかる
法人化した場合、フリーランスとは異なり様々なコストがかかるので注意しましょう。
フリーランスが法人化することで、以下のコストがかかります。
・設立コスト
法人化するには法務局で設立登記申請を行います。株式会社の場合、登記代、及び印紙代で約24万円必要です。
登記手続きは複雑なので、自分で行うのは大変です。しかし司法書士、行政書士に依頼した場合は、5万円~10万円程度の金額が追加でかかることを念頭に置いておきましょう。
・赤字でも税金がかかる
フリーランスは年間の収入が赤字の場合、税金を支払う必要はありません。対して、法人は会社の利益を問わず、毎年7万円程度の税金を支払う必要があります。
・社会保険の負担額が大きい
法人化したら、本人、及び加入要件を満たす従業員は社会保険に加入する義務が発生します。社会保険料の支払いは、半分は従業員、残り半分は会社が負担します。
法人化する目安・タイミング
フリーランスで法人化する人は少なくありませんが、どのようなタイミングで法人化すると良いのでしょうか。
ここでは、法人化する目安・タイミングについて説明していきます。
課税所得が900万円を超える
課税所得が900万円を超えるフリーランスは、法人化した方が税金の負担が軽くなります。フリーランスの所得税には累進課税方式が採用されており、課税所得の金額によって税率は変化します。たとえば、課税所得が900万円以下であれば所得税は23%ですが、900万円を超えると33%と高くなります。
対して、法人は最高23.2%の固定税率が適用となっています。課税所得が高いほど、所得税よりも法人税の方が税金が安くなると言えるでしょう。
参考:財務省ウェブサイト(https://www.mof.go.jp/tax_policy/summary/corporation/c01.htm)
売上高が1,000万円を超える
フリーランスは1年間の売上高が1,000万円を超えると、2年後に消費税の納税を行わなければなりません。法人の場合、起業から2年間は消費税の支払いは免除となります。
フリーランスとして働いていて売上高が1,000万円を超えた場合、2年経過したタイミングで法人化すれば、さらに2年間消費税の免除が可能になります。
法人化の手続き
法人化するには、各種手続きを踏まなければなりません。手続きの内容は一般の人にとって馴染みのないものがほとんどであるため、自分でやろうとすると大きな負担になることもあるでしょう。
法人化にあたっての手続きは弁護士、司法書士に依頼することも可能ですが、ここからは、フリーランスが法人化するにはどのような手続きを行う必要があるのか、紹介していきます。
定款の作成
定款とは会社の規則を意味し、「会社の憲法」と呼ばれることもあります。
定款には、会社名、事業内容、運営方法、目的などを記入しなければいけません。会社の活動は定款に明記されている範囲に限られます。
登記
登記とは法律で定められた事項を、登記簿に記入することです。登記は法律で定められているため、手続きが完了しない限り会社として認めてもらえません。
登記を行うことによって社会的信用につながり、ビジネスの取り引きがしやすくなります。
諸官庁への届け出
会社を設立する場合、諸官庁に届け出を出す必要があります。あわせて、税務署では国税関係、税務事務所においては地方税関係の届け出を行わなければなりません。
法人設立、及び資産の移行が完了したら、個人事業主の廃業手続きを税務署にて行ってください。
健康保険、年金の手続き
社会保険の加入は従業員が自分一人であっても、法人になったら加入する必要があります。社会保険とは厚生年金、健康保険を主に指し、手続きは管轄の年金事務所でできます。
まとめ
フリーランスとして働かれている人や、フリーランスにこれからなろうとしている人の中には、法人化に憧れを抱く人も多いでしょう。法人化することで、社会的信用を得られたり、決算時期を選択できたりと魅力的に映る部分も多いです。また、「自分の会社をもってみたい」という夢を抱かれている人もいらっしゃるでしょう。
しかし、フリーランスが法人化するには時間的コスト、金銭的コストがかかることを忘れてはいけません。法人化にあたって各種手続きが不可欠であり、ある程度の手間を要します。また、税金、ならびに社会保障料の負担など、売上によってはフリーランス時代以上に費用がかかるケースも少なくありません。
法人化する際は、フリーランスとして働く場合と法人化する場合ではどちらが利益を得られるかしっかりと考え、判断する必要があるでしょう。