パーソルホールディングス株式会社は、「はたらく」を考える全国就業者データベース「はたらく定点調査」を実施。今回は「ハイクラス(年収800万以上)人材」を切り口にまとめた内容について公開した。
【調査結果サマリー】
■仕事への価値観:ハイクラス人材は「自分の成長が重要だ」「未来のため」「やりがいのため」と答えた割合が、年収800万円未満の人材よりも高かった。
・「自分の成長と安定したパフォーマンスの発揮、仕事をするときにどちらの考え方に近いですか?」という問いについて、ハイクラス人材は「自分の成長が重要だ」と答えた割合が44.4%で、年収800万円未満の人材と比較して8.1pt高かった。また、「やり遂げた先の明るい未来のために頑張れる」「目の前の仕事を消化することに集中する」いう2つの選択では、「未来のため」と答えた割合が56.6%で、年収800万円未満の人材と比較して18.4pt、「お金のためにする」「やりがいのためにする」という2つの選択では、「やりがいのためにする」と答えた割合が35.0%で、そうでない人材と比較して10.6pt高かった。
■自信のある経験・能力:ハイクラス人材は「リーダーシップ・推進力」、「論理的思考力」、「専門的なスキル」、「交渉力」といった項目で年収800万円未満の人材と比べて自信を持っている割合が高かった。
・「仕事をする上で、あなたが自信を持てている経験や能力について教えてください」という質問で、ハイクラス人材は「リーダーシップ・推進力」、「論理的思考力」、「専門的なスキル」、「交渉力」と回答した割合が多かった。一方、「まじめな人柄」と答えた人の割合は、年収800万円未満の人材のほうが高かった。
■仕事上で気をつけていること:ハイクラス人材は「部下や同僚を褒める」、「ポジティブな意見を言う」、「即断即決」、「業務の効率化」といった項目でそうでない人材と比べて、気をつけている割合が高かった。
・「仕事をするうえであなたはどのようなことに気をつけていますか」という質問で、ハイクラス人材は「部下や同僚を褒める」、「ポジティブな意見を言う」、「即断即決」、「業務の効率化」といった項目が高かった。一方、「速さよりも正確性を重要視する」と答えた割合は、年収800万円未満の人材のほうが高かった。
本データは「はたらく定点調査」のなかから、世代間を比較したデータを抜き出したものの一部です。
「はたらく定点調査」は幅広い世代の多様なデータを通じて、はたらき方に関わる生活全般の実態と変化を可視化しています。地域別、ジェンダー別、年収別、年齢別、職業・職種別、さらには価値観など、さまざまな切り口でデータを抽出することが可能です。
昨今、「ワークライフバランス」「女性活躍」「柔軟なはたらき方」「ダイバーシティ」など、「はたらく」に関する価値観はかつてないほど多様化しています。本調査を通して「はたらく」に関するさまざまなデータをご紹介することで、自らのキャリア選択を考える一助としていただきたいと考えています。
TOPICS
1. ハイクラス人材の価値観
●ハイクラス人材は、「自分の成長」と「安定したパフォーマンスの発揮」を比較した時に「自分の成長」と答えた割合が44.4%、「安定したパフォーマンスの発揮」と答えた割合が55.6%だった。一方、年収800万未満の人材は、「自分の成長」と答えた割合が36.3%、「安定したパフォーマンスの発揮」と答えた人が63.7%だった。
●ハイクラス人材は、「やり遂げた先の明るい未来のために頑張れる」と「目の前の仕事を消化することに集中する」を比較した時に、「明るい未来のため」と回答した割合が56.6%、「目の前の仕事」と回答した割合が43.4%だった。一方、年収800万未満の人材は、「明るい未来のため」と答えた割合が38.2%、「目の前の仕事」と答えた人が61.8%だった。
●ハイクラス人材は、「仕事はお金のためにする」と「仕事はやりがいのためにする」を比較した時に、「お金のためにする」と回答した割合が65.0%、「やりがいのためにする」と回答した割合が35.0%だった。一方、年収800万未満の人材は、「お金のためにする」と答えた割合が75.6%、「やりがいのためにする」と答えた人が24.4%だった。
2.ハイクラス人材の自信のある経験・能力
仕事をするうえであなたが自信を持てている経験や能力について、ハイクラス人材は、「リーダーシップ・推進力」、「論理的思考力」、「専門的なスキル」、「交渉力」といった多くの項目で年収800万未満の人材よりも高い割合を示した。一方で「まじめな人柄」と答えた割合は年収800万未満の人材の方が高かった。
3.ハイクラス人材が仕事をするうえで気をつけていること
仕事をする上で気をつけていることについて、ハイクラス人材は、「部下や同僚を褒める」、「ポジティブな意見を言う」、「即断即決」、「業務の効率化」といった項目で年収800万未満の人材と比較して高い割合だった。一方で「速さよりも正確性を重要視する」と答えた割合は、年収800万未満の人材の方が高かった。
■結果考察 パーソル総合研究所 研究員 金本 麻里
近年、自尊感情、共感性、粘り強さ、好奇心といった非認知能力の重要性が、教育分野を中心に叫ばれている。IQなどの認知能力以上に、非認知能力が人の人生の成功や豊かさにつながることが近年の研究で示されているからだ。年収との関連を見た先行研究では、ビッグファイブと呼ばれる5つの性格特性(外向性、協調性、誠実性、開放性、情緒安定性)のうち、外向性・誠実性・協調性は、日本人の所得にプラスに影響することが報告されている※。
本調査の結果からは、年収800万円以上のハイクラス人材は、成長志向、未来志向、やりがい志向が強く、内発的な動機づけが高いことが分かる。また、仕事において、部下や同僚をほめる、ポジティブな意見を言うなど、周囲を前向きにする働きかけをしている傾向がある。自信がある経験・能力では、論理的思考力や専門スキルに加え、リーダーシップ・推進力、交渉力や決断力、人を巻き込む力といった非認知能力に自信を持っている傾向が見られ、即断・即決などスピート感もうかがえる。
このような意欲や推進力、決断力、コミュニケーション能力といった非認知能力が、仕事で成果を出し高い収入を得ることにつながっていると考えられる。非認知能力は、個人の資質や幼少期の経験の影響が指摘されるが、昨今注目される「自己肯定感」のように、大人も経験や心がけを通じて高められるとされる。キャリア形成において、非認知能力の学びやトレーニングにも目を向けてみたい。
※参考:独立行政法人経済産業研究所(2014)非認知能力と行動特徴が学歴、所得、および昇進に与える影響の分析
【調査概要】
調査方法:オンライン
調査時期:2023年3月
調査対象:15歳から69歳の男女・本業または副業ではたらいている人
調査人数:100,000人
「はたらく定点調査」データベース:https://data.persol-group.co.jp/