「コアメンバー=正社員」は時代遅れ?…いま、日本企業が“柔軟な”雇用制度を取り入れるべき理由

柔軟な雇用制度の活用例

企業における柔軟な雇用制度の活用事例としては、まず繁忙期への対応が挙げられるでしょう。一度雇用すれば、原則として定年まで雇用する必要のある正社員では、夏季や冬季のみといった特定の繁忙期への対応は困難です。

しかし、雇用されることなく、自己の裁量で柔軟に働くフリーランスであれば、繁忙期のみ雇用することもできます。季節によって極端な繁忙の差のあるスキー場や併設の宿泊施設などで活用できるでしょう。

また、専門的スキルを持った外部人材に業務を委託すれば、仕事の質を落とすことなく、福利厚生費などのコストカットが可能です。専門的スキルを持ったフリーランスであれば、これまで正社員が行ってきた業務を代わりに行うことが可能となるでしょう。

すでに専門的知識やスキルを持っているフリーランスであれば、企業は新たに教育を行う必要もありません。また、外部人材の活用によって、正社員がより利益や売上に直結するコア業務のみに注力できるようになります。経理業務への外部人材活用などが代表例となるでしょう。

フリーランスや副業といった柔軟な雇用制度の提示は、企業だけでなく働く側の利便性向上にもつながります。

育児や介護によりフルタイムの勤務が困難な人材であっても、短時間で期間を限った勤務なら可能な場合もあります。また、フリーランスや副業であれば出社や退社といった労働時間の拘束がないため、自分の時間を多く作ることができ、ワークライフバランスの向上にも資するといえそうです。

正社員以外のメンバーの雇用における注意点

正社員以外の人材を活用することは、コストカットのみならず、業務の効率化にもつながります。しかし、ただ単に正社員の業務を正社員以外に置き換えるだけでは、望む効果は得られないでしょう。

期間を定めて雇用される契約社員や、派遣期間の限られた派遣社員では、どうしても企業へのエンゲージメント向上は望みづらくなっています。職場への愛着がなければ、どうしても作業はおざなりになってしまうため、適切な対策を施すことが必要です。

また、望んだスキルを持った者が派遣されてくるとは限らず、場合によっては業務効率の大幅な低下を招きかねません。業務の範囲にも注意が必要となり、正社員と同様と判断されれば、正社員と同様の待遇や教育訓練が求められます。

 

また、フリーランスや個人事業主へ業務を委託する際には、ノウハウ流出や機密情報の漏洩にも気を配ることが必要となるでしょう。これは、外部の派遣会社から派遣されてくる派遣社員でも同様です。

しかし、それらの注意点を鑑みても、正社員以外の人材活用には大きなメリットがあります。少子高齢化の進展により、労働力人口の減少傾向が続く我が国では、労働力不足の解消が喫緊の課題です。採用競争は激化の一途を辿り、正社員を雇用することは容易ではありません。

そのような状況下にあっては、柔軟な雇用形態の提示による、これまでとは異なった人材活用が必要となるでしょう。

<著者>
涌井 好文

平成26年より神奈川県で社会保険労務士として開業登録を行い、以後地域における企業の人事労務や給与計算のアドバイザーとして活動を行う。退職時におけるトラブル相談や、転職時のアドバイスなど、労働者側からの相談にも対応し、労使双方が円滑に働ける環境作りに努めている。また、近時は活動の場をWeb上にも広げ、記事執筆や監修などを通し、精力的に情報発信を行っている。

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